上司への退職の切り出し方
引き止められたときの考え方と文例
先に結論
退職は、内定を承諾してから、就業規則の申し出期限より前に、直属の上司へ口頭で伝えましょう。昇給や異動で引き止められたら、提案を書面かメールで受け取り、その提案で辞めたい理由がなくなるかで、残るか辞めるかを決めてください。退職日を延ばしてほしいと言われたら、内定先の入社日に間に合うかを確かめましょう。
この記事の目次
転職先から内定をもらい、あとは今の会社に伝えるだけ。それでも上司の顔を思い浮かべると、いつ、どう切り出せばいいのか分からなくなる。
「給料を上げるから残ってくれ」と言われたら、断りきれるだろうか。引き継ぎでもめないか、ボーナスは受け取れるのか。心配が重なって、切り出す日を先に延ばしてしまう。
この記事では、退職を伝える順番、上司への切り出し方の文例、引き止められたときに確かめることをまとめます。
上司が退職を認めない、退職届を受け取らないといったときは、話し合いを何度も重ねる前に相談してください。相談先は、都道府県労働局や労働基準監督署などにある総合労働相談コーナー(予約不要・無料)です。
転職した人の4割強が、前の会社から引き止められている
マイナビが2025年に転職した正社員に聞いた調査では、「前の会社から退職を引き止められた」に「そう思う」と答えた人が42.9%でした※1。転職した人の、およそ5人に2人です。引き止められるのは、珍しいことではありません。
同じ調査で退職交渉の難しさを聞くと、難しかったと答えた人は29.1%でした※2。
引き止められた人(42.9%)は、退職交渉が難しかったと答えた人(29.1%)より多くいます。引き止められても、交渉を難しいとは感じなかった人がいたということです。引き止められることと、退職の話がこじれることは、同じではありません。
こじれないように自分で準備できるのは、伝える順番と、引き止められたときの返し方です。どちらも、上司に切り出す前に決めておきましょう。
退職を伝える順番と、切り出しの文例
退職は、次の順番で進めてください。
| 順番 | やること | 確かめること |
|---|---|---|
| 1 | 入社日を決める前に、今の会社の決まりを確かめる | 就業規則の退職の申し出期限、賞与の支給条件、有給休暇の残り日数、引き継ぎにかかる日数 |
| 2 | 内定先に承諾の返事をする | 年収や入社日などの条件が、書面で示されているか |
| 3 | 直属の上司に、口頭で伝える | 退職の希望日を、伝える前に決めてあるか |
| 4 | 上司と、退職日と引き継ぎの予定を決める | 最終出社日と有給休暇を使う日を、退職日と分けて決めたか。退職届の出し方を聞いたか |
| 5 | 同僚や取引先に伝える | 伝える時期を、上司と決めたか |
入社日を約束したあとで申し出期限を知ると、今の会社と内定先の板ばさみになりかねません。今の会社の決まりは、承諾の返事より先に確かめてください。
ボーナスが出るかどうかは、就業規則や賃金規程の支給条件で決まります。支給日が近い人は、ボーナスをもらってから辞めるにはの手順で、上司に伝える前に退職の希望日を考えておきましょう。
法律(民法627条1項)では、雇用の期間を定めていない場合、解約を申し入れた日から2週間がたつと雇用は終わると定められています。ただ、就業規則で申し出の期限を別に決めている会社もあります。引き継ぎと有給休暇の消化まで話をまとめるために、就業規則の期限より前に伝えましょう。
最初に伝える相手は、直属の上司です。同僚や上司の上の人に先に話すと、上司は、あなたの退職を人づてに聞くことになり、話がこじれやすくなります。
時間をもらうとき(口頭かチャットで)
〇〇さん、今後のことでお話ししたいことがあります。今週どこかで15分ほど、会議室でお時間をいただけますか。
「相談したいこと」と言うと、まだ迷っていると受け取られ、引き止めの話から始まりやすくなります。「お話ししたいこと」と伝えましょう。
切り出すとき
お忙しいところ、ありがとうございます。突然で申し訳ありませんが、〇月〇日付で退職させていただきたく、お時間をいただきました。次の職場が決まり、〇月〇日から働くことになっています。
退職の希望日と入社日を添えると、相談ではなく、もう決めたことだと伝わります。
理由を聞かれたとき
〇〇の仕事に、もっと深く関わりたいと考えて決めました。ここで△△を任せていただいたことが、次の仕事を選ぶきっかけになりました。
本当の理由が給与や上司への不満でも、その場で不満を並べる必要はありません。不満を挙げると「そこを直すから残ってほしい」という話になりやすいからです。
前向きな理由を話すのは、うそをつくことではありません。辞めたい理由の裏にある「次はこう働きたい」を、言葉にすればよいのです。
引き止められたら、提案を書面かメールで確かめてから決める
昇給や異動を提案されたら、その場では返事をしないでください。昇給の提案なら、次のように返しましょう。
評価していただき、ありがとうございます。大事なお話なので、少し考えさせてください。昇給後の金額と、何月の給与から上がるかを、書面かメールでいただけますか。内容を確かめて、〇日までにお返事します。
返事をする日は、数日以内の日にちを自分から示してください。残ると決めた場合は、承諾した内定先に、早く辞退を伝える必要があるからです。
提案の中身は、次の表で確かめてください。
| 言われたこと | 書面かメールで確かめること | 決め手になる問い |
|---|---|---|
| 給料を上げるから残ってほしい | 昇給後の金額と、何月の給与から上がるか | 辞めたい理由は、給与だけだったか |
| 希望の部署に異動させる | 異動先の部署、仕事の内容、異動の時期 | 辞めたい理由は、今の部署や上司にあったか |
| 後任が決まるまで待ってほしい | 引き継ぎの予定と、延ばす場合の退職日 | 延ばしても、内定先の入社日に間に合うか |
提案の中身と時期は、会社から書面かメールで受け取ってください。口頭だけのときは、自分から確認のメールを送り、返事を残しておきましょう。返事がないときや、書面やメールでは出せないと言われたときは、まだ決まっていないものとして扱ってください。
昇給を提案されたときは、金額より先に、辞めたい理由が給与だけだったかを確かめてください。
同じマイナビの調査で、給与が低いことをきっかけに転職した人に聞くと、「前の会社で給与や待遇が改善されていたら、辞めなかった」に「そう思う」と答えた人は44.3%でした※3。給与や待遇が良くなっても、残ったとは言い切れない人のほうが多い、ということです。
昇給・異動の提案と、退職日を延ばしてほしいという頼みは、次のように判断してください。
- 辞めたい理由が給与だけで、昇給の金額と開始月を書面かメールで確かめられた:内定先の条件と並べて、どちらにするかを決めてください。昇給で辞めたい理由がなくなるなら、残ると決めてかまいません。
- 給与のほかにも辞めたい理由がある:昇給では、その理由はなくなりません。給与のほかの理由(仕事の任され方や仕事内容など)がどう変わるのかも上司に聞き、変わらないなら、予定どおり退職を進めてください。変わると言われたら、その中身も書面かメールで受け取ってから決めてください。
- 異動を提案された:辞めたい理由が今の部署や上司にあり、異動先と時期を書面かメールで確かめられたら、内定先の条件と並べて決めてください。辞めたい理由が、全社共通の給与制度のように、異動しても変わらないことなら、異動ではその理由はなくなりません。その点が変わる提案もなければ、予定どおり退職を進めてください。
- 後任が決まるまで待ってほしいと言われた:延ばした場合の退職日が、内定先の入社日に間に合うかを確かめてください。間に合わないなら、退職日は延ばさず、退職日までの引き継ぎの方法を上司と相談しましょう。間に合う範囲なら、延ばす日数を上司と決めてください。
残ると決めたら、内定先への連絡は、承諾したあとの辞退になります。その日のうちに電話で伝え、同じ日にメールでも送りましょう。伝え方の文例は、内定辞退の伝え方にまとめています。
辞めると決めたら、上司に次のように伝えてください。
ありがたいお話ですが、次の職場で〇〇に取り組むと決めましたので、予定どおり退職させてください。退職日までに引き継ぎを終えられるよう、予定表を作ってお持ちします。
退職を切り出した場面で考える(例)
以下は、判断の違いを見せるための想定の例です。
例1:29歳・生産管理。辞めたい理由は給与だけ。退職を伝えると「来月の給与から月3万円上げるから、残ってほしい」と言われた。
その場では返事をせず、昇給の金額と開始月をメールでもらうよう上司に頼んだ。翌日、人事からその内容のメールが届いた。昇給後の年収は、内定先の提示額とほぼ同じになる。
→ この人は、辞めたい理由がなくなるので、残ると決めます。内定先には、その日のうちに電話で辞退を伝え、同じ日にメールでも送ります。
例2:30歳・事務。辞めたい理由は、給与の低さと、上司が仕事を任せてくれないこと。上司から昇給を提案された。
上司に「仕事の任され方は変わりますか」と聞くと、「それは今までどおり」と返ってきた。
→ この人は、昇給では仕事を任せてもらえない不満が解消されないので、提案への感謝を伝え、予定どおり退職を進めます。
例3:27歳・システムエンジニア。上司から「後任が決まるまで待ってほしい」と言われた。入社日は2カ月後で、退職日は入社日の前日と伝えてある。有給休暇は10日残っている。
この人は翌日、担当業務の一覧と、引き継ぎに4週間かかる見込みの予定表を上司に見せた。後任が決まるまでは、業務の手順書を作っておくことも伝えた。
→ この人は、退職日を延ばさず、予定表に沿って引き継ぎを終えます。そのあとの期間で有給休暇を使えるよう、上司と日程を決めます。
次の一歩は、担当業務の一覧を作ること
上司に切り出す前に、今週のうちに、担当している業務を一覧に書き出してください。業務ごとに、引き継ぎにかかる日数と、引き継ぐ相手の候補も書き添えましょう。
一覧があれば、「後任が決まるまで待ってほしい」と言われても、予定をもとに話を進められます。
引き止めの提案を受けて、辞めたい理由を整理し直したいときは、辞めたい理由を5つの軸で整理する方法で、理由ごとに社内で解決できるかを確かめられます。