有給消化は退職前に断られても使える?残りを使い切る申し出の時期
先に結論
退職が決まった人の有給休暇は、請求すれば会社が与えなければならず、退職日のあとへはずらせないと労働局は説明しています。退職を申し出た翌日から退職日までの出勤日を「有給休暇の残り+引き継ぎに出る日」以上にとれば、1年に付く分(厚生労働省の調査で、30人以上の企業が1年に付けた平均18.1日)が残っていても使い切れます。
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退職を伝えたら、上司に「この時期に有給消化は無理だよ」と言われた。引き継ぎもあるから、最終日まで出てほしい、と。有給休暇は20日以上残っているのに、このまま消えてしまうのだろうか。
これから退職を申し出る人も、何週間前に伝えれば有給休暇を使い切れるのか、見当がつかないまま退職日を決めかけているかもしれません。
この記事では、退職前の有給休暇を会社がどこまで動かせるかを法律と労働局の説明で確かめたうえで、有給休暇の残りから申し出の時期を決める表と、断られたときの返し方をまとめます。
会社は、退職前の有給休暇を退職日のあとへずらせない
労働基準法では、有給休暇は働く人が請求した時季に与えるものです。会社が別の時季にずらせるのは、その日に休まれると事業の正常な運営を妨げる場合だけです※1。
退職が決まった人について、愛知労働局は、請求があれば休暇を与えなければならないと説明しています。会社が時季を変える場合も、変えられるのは退職日までの範囲内で、それを超えては変えられません※2。退職日を過ぎると、残った有給休暇は請求できなくなります※3。
「繁忙期だから」「引き継ぎがあるから」と言われても、会社にできるのは、退職日までの中で休む日を動かすことまでです。残りを使い切れるかを決めるのは、会社の許可ではなく、申し出てから退職日までに出勤日が何日あるかです。
有給休暇の残りから、退職日の何週間前に申し出るかを決める
厚生労働省の調査では、2024年の1年間に会社が付けた有給休暇(前の年からの繰り越しを除く)は、労働者1人あたり平均18.1日でした※4。同じ調査で、1年間の休日は1人あたり平均116.6日です※5。対象は、常用労働者30人以上の民営企業で、期間を定めずに雇われている人(パートタイムを除く)です。
1年365日から休日の116.6日を引くと、出勤日は約248日、1週間あたり約4.8日です。1年分の18.1日を使い切るには、出勤日で約4週間かかります(編集部の計算)。
期間の定めのない雇用なら、民法では、退職を申し出た日から2週間で辞められます※6。ただ、2週間の出勤日は約9.5日なので、1年分の有給休暇の半分ほどしか使えません。引き継ぎにも出勤日を使えば、使える日はさらに減ります。
申し出の日は、退職を申し出た翌日から退職日までの出勤日が、有給休暇の残りと引き継ぎに出る日を足した日数以上になるように決めましょう。退職日の何週間前までに申し出るかの目安は、次の表のとおりです。
| 有給休暇の残り | 引き継ぎに出る日が10日 | 引き継ぎに出る日が20日 |
|---|---|---|
| 10日 | 5週間前まで | 7週間前まで |
| 20日 | 7週間前まで | 9週間前まで |
| 30日 | 9週間前まで | 11週間前まで |
| 40日 | 11週間前まで | 13週間前まで |
表は、1週間の出勤日を約4.8日として数え、端数を切り上げた編集部の計算です。年末年始や夏休み、大型連休をはさむときや、休日が平均より多い会社では、会社のカレンダーで出勤日を数え直してください。就業規則に退職の申し出の期限があれば、表の週と比べて早いほうに合わせましょう。
申し出たら、使う日を日付で書いて、メールでも伝えておきましょう。
退職日の○月○日までに、年次有給休暇の残り○日を使わせてください。引き継ぎは○月○日までの出勤日で終える予定で、予定表を添えます。○月○日から○月○日までの出勤日に、有給休暇を使います。日にちの調整が要る日があれば、退職日までの範囲でご相談させてください。
断られたときの返し方と、会社の求めに応じた方がいい場合
断られたときは、言われた中身ごとに、次のように返しましょう。
- 「繁忙期だから」「引き継ぎが終わるまで」:退職日のあとへはずらせないことを伝え、引き継ぎの予定表を見せて、どの日に何を終えるかを話し合う
- 「休まずに出て、残りは買い取る」:法律で付いた分は、買い取りを約束して、請求した日を与えないことはできません※7。休みたいなら、使う日を日付で書いて請求し直す
- 引き継ぎの日まで含めると出勤日が足りないが、有給休暇の残りだけなら足りる:会社は、請求した有給休暇を退職日のあとへずらせないので、引き継ぎの日が残らなくても、有給休暇は使えます。引き継ぎをどこまで済ませるかは、上司と話し合って決める※3
- 有給休暇の残りだけでも出勤日が足りない:転職先の入社日まで余裕があれば、退職日をうしろにずらせないか相談する。余裕がなければ、残る分の買い取りを相談する。退職のときに残る分を買い取るかは、就業規則に決まりがなければ会社が決めます※3
返しても認めてもらえないときは、労働局や労働基準監督署にある総合労働相談コーナー(無料・予約不要)に相談してください。
退職日までに、有給休暇を使わない出勤日があるときは、申し出た日に休まれると事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社は退職日までの範囲で休む日をずらせます※1。後任が来る日や、取引先へのあいさつの日に出てほしいと言われたら、有給休暇を使わない出勤日の範囲で応じましょう。引き継ぎを前半に寄せておくと、有給休暇をまとめて使いやすくなります。
次の人は、この記事の数え方がそのまま当てはまりません。
- 入社から6カ月たっておらず、まだ有給休暇が付いていない人
- 法律で決まった日数を超える分や、会社独自の特別休暇を使いたい人。扱いは就業規則で確かめる
- 派遣で働く人。請求するのは派遣元の会社※8
- 労使協定による計画的付与で、有給休暇を使う日を会社が前もって決めている分がある人。決まっている日は、就業規則と会社のカレンダーで確かめる※9
有給休暇を使った日を欠勤として給与から引かれたときは、労働基準監督署に相談してください。有給休暇が取れた日を欠勤として給与から引くことはできない、と厚生労働省は説明しています※10。
年末の繁忙期に有給休暇を断られた場面で考える(例)
以下は、想定の例です。
例:30歳・営業事務。1月3日に退職し、1月4日に転職先へ入社する。11月10日(火)に上司へ退職を伝えると、「年末は忙しいから、有給休暇は無理」と言われた。有給休暇は22日残っていて、引き継ぎには出勤日で10日かかる見込み。会社は土日・祝日と12月29日〜1月3日が休み。
→ この人は、11月11日から12月28日(退職日までで、会社が休みでない最後の日)までの出勤日を数え、33日あると確かめます。有給休暇の22日と引き継ぎの10日を足した32日より多いので、残りを使い切れます。引き継ぎを11月25日までの10日に寄せた予定表と、11月26日からの出勤日に有給休暇を使うことを書いたメールを上司に出します。余る1日は、後任へのあいさつなど、会社が出てほしい日に回します。
次の一歩は、退職日までの出勤日を数えること
今日のうちに会社のカレンダーを開き、退職を申し出る日の翌日(もう申し出たなら明日)から退職日までの出勤日を数えてください。その日数が、有給休暇の残りと引き継ぎに出る日を足した日数に足りるなら、使う日を日付で書いて上司に伝えましょう。足りないときも、退職日までの出勤日の範囲なら、有給休暇を使う日を日付で書いて請求できます。引き継ぎの日の決め方は、上司と話し合ってください。
退職日と最終出社日の分け方や、転職先の入社日をいつに置くかは、転職後の有給休暇はいつから使えるかの後半で確かめられます。
出典・注記(10件)
※2 愛知労働局「年次有給休暇のポイント」問5 ↩
※3 香川県労働委員会「退職前の年次有給休暇請求」 ↩1 ↩2 ↩3
※4 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」第5表 ↩
※5 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」第4表 ↩
※6 民法第627条第1項 ↩
※7 鹿児島労働局「よくあるご質問 年次有給休暇」Q8 ↩
※8 愛知労働局「年次有給休暇のポイント」問6 ↩
※9 労働基準法第39条第6項 ↩
※10 厚生労働省「スタートアップ労働条件」年次有給休暇 Q13 ↩
数字は、出典の定義(誰の数字か・いつの数字か)のまま使っています。計算した数字には「計算の例」と書いています。編集方針
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