Uターン転職で後悔しないために
地元の年収と家賃を先に比べる
先に結論
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2025年)と家賃の統計で比べると、東京都から新潟県に戻る場合、月給の差のうち家賃の差で戻るのは約35%です(編集部の計算)。残りは地元で減る前提で、自分の月給と家賃で比べましょう。
この記事の目次
年末の帰省が近づくと、地元に戻って働く暮らしを考える人が増えます。親の近くにいたい、通勤の混雑から離れたい、家賃の高さに疲れた。理由はいろいろでも、「戻ったら年収は下がる。でも家賃が安くなるから、きっと何とかなる」と考えているところは、似ているはずです。
その「何とかなる」を数字で確かめないまま決めると、入社してから毎月の残る額が想像と違い、後悔につながります。
この記事では、都道府県別の月給と家賃を国の統計で並べ、地元に戻ったときに月々の残る額がどう変わるかを自分の数字で計算する手順をまとめます。
東京都から新潟県へ戻ると、家賃で戻るのは月給の差の約35%だけ
厚生労働省の調査では、2025年6月分の所定内給与(残業代を除いた月給)は、フルタイムに近い一般労働者の全国計が34.1万円、東京都が41.8万円、新潟県が29.2万円でした※1。東京都から新潟県へ移ると、県の平均で月に12.6万円の差があります。
家賃は、総務省統計局の統計で、県庁所在市の民営賃貸住宅の1か月3.3平方メートル(1坪)あたりの家賃が分かります。2024年は東京都が9,736円、新潟県が3,966円でした※2。1人暮らしの目安として25平方メートルの部屋に直すと、東京都が約7.4万円、新潟県が約3.0万円で、差は約4.4万円です(編集部の計算)。
月給の差12.6万円のうち、家賃の差で戻るのは4.4万円、割合にして約35%です。残りの約8万円は、家賃が下がっても戻りません。
同じ計算を、表の県で東京都から移る場合に当てはめると、家賃で戻る割合は32〜47%に収まります(宮城県が約32%、神奈川県が約47%)。東京都から地元に戻る人は、「家賃が安くなる分で、年収の下がりはだいたい取り返せる」と考えがちですが、統計の平均で見ると、半分には届かず、新潟県・北海道・宮城県などでは3分の1ほどです。
逆に、家賃がもともと高くない県どうしでは、さらに戻りません。愛知県から島根県へ移ると、月給の差は5.9万円に対して家賃の差は約1.0万円で、戻る割合は約17%です※3。
地元の月給と家賃を、自分の数字で比べる手順
次の表は、移り先になりやすい県の月給と家賃です。家賃÷月給は、月給のうち家賃にあてる割合の目安です。東京都は月給の17.6%、表のほかの県では9.6〜13.7%で、家賃の負担は軽くなります。
| 県 | 月の所定内給与 | 25平方メートルの家賃(編集部の計算) | 家賃÷月給 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 41.8万円 | 7.4万円 | 17.6% |
| 神奈川県 | 36.9万円 | 5.1万円 | 13.7% |
| 大阪府 | 34.9万円 | 4.7万円 | 13.4% |
| 愛知県 | 34.2万円 | 4.0万円 | 11.6% |
| 福岡県 | 31.4万円 | 3.7万円 | 11.7% |
| 宮城県 | 31.4万円 | 4.0万円 | 12.7% |
| 広島県 | 32.0万円 | 3.4万円 | 10.7% |
| 北海道 | 29.7万円 | 3.3万円 | 11.0% |
| 新潟県 | 29.2万円 | 3.0万円 | 10.3% |
| 愛媛県 | 29.1万円 | 2.8万円 | 9.6% |
表にない県は、「統計でみる都道府県のすがた」で同じ項目を調べられます。次の5つの手順で、自分の数字に直してください。
- 今住んでいる県と地元の県の月給を、表から拾う
- 今の月給に「地元の月給÷今の県の月給」をかけて、地元で想定される月給を出す
- 地元の家賃は、表の額に「住みたい部屋の広さ÷25」をかけて出す。今の家賃は、実際に払っている額を使う
- 「地元の想定月給−地元の家賃」から、「今の月給−今の家賃」を引く
- マイナスなら、12をかけた額が1年に減る額で、これが貯金や支出の削れる額に収まるかを見る
月給は額面で、家賃は手取りから払うので、ここでは同じ土俵に並べるために額面のまま引いています。手取りで比べると、月給の差は小さくなり、家賃で戻る割合は少し大きくなります。税金や社会保険料は人によって違うため、細かい数字は給与明細で直してください。
当てはまらない人と、数字がずれる場合
この計算は県の平均どうしの比です。次の人は、そのまま当てはめずに読み替えてください。
- 実家に住む人:地元の家賃を0円として、地元の家賃を出す手順を飛ばします。後悔の中心になりやすい差し引きが、小さくなります。
- 今の月給が、県の平均より大きく高い人・低い人:職種や年齢が、県の平均と違います。想定月給は目安にとどめ、地元の求人票の月給で上書きしてください。同じ職種でも、求人の月給は県の中でも差があります。
- 家賃が、表の額と大きく違う人:表の家賃は県庁所在市の平均の坪単価を25平方メートルに直した額で、狭い部屋ほど坪単価は高くなりがちです。実際の物件の家賃で上書きしてください。
- 今の仕事を続けたまま、地元でリモートで働ける人:転職する前に、今の会社に先に聞いておきたい選択肢です。比べる相手が「今の県の月給」でなくなります。
- 地元に、自分の職種の求人がほとんどない人:月給の前に、求人の数が問題になります。ハローワークインターネットサービスで、地元の求人を職種で絞って見てから、この計算に戻りましょう。
家賃のほかに、車の維持費のように、地元に戻ると増える支出もあります。この記事の式は、月給と家賃の2つだけを比べたものです。
厚生労働省の転職者実態調査(2025年)で、現在の勤め先を選んだ理由に「地元だから(Uターンを含む)」を選んだ転職者は11.7%でした。年齢別では、25〜29歳が8.1%、30〜34歳が5.8%、40〜44歳が17.3%です※5。戻る理由が月給や家賃ではない人は、数字がマイナスでも、決めてよい場合があります。ただし、マイナスの額を知らないまま決めた人と、知ったうえで決めた人では、入社後の見え方が違います。
東京都で働く28歳が、新潟県へ戻る場面で比べる(例)
以下は、想定の例です。
例:28歳・営業。東京都で月給33万円、家賃7.4万円の部屋に住んでいる。新潟県に戻る転職を考えていて、家賃は新潟市で同じ広さの部屋に住む想定。
→ この人は、月給を地元の水準に直す手順で、33万円に「29.2÷41.8」をかけ、地元の想定月給を約23.0万円と出します。月給は10.0万円下がります。地元の家賃は約3.0万円で、家賃の差は4.4万円です。差し引きは、月に約5.6万円、年に約67万円のマイナスです。
この人が地元の求人票で見るのは、月給23.0万円を上回る求人かどうかです。月給が24万円を超える求人なら、マイナスは月4.6万円まで縮みます。実家に住めるなら、地元の家賃が0円になり、差し引きは月に約2.6万円のマイナスまで縮みます。
次の一歩は、自分の数字を5つの手順に入れること
今週のうちに、今の月給と家賃、地元の県の月給を、5つの手順に入れてください。月に何万円のマイナスかが出たら、同じ額を、今の貯金と毎月の支出から削れる額と並べます。
月給が下がる転職でも、手取りでどれだけ変わるかを確かめる手順は、年収が下がる転職の手取りにまとめています。
出典・注記(5件)
※1 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第8図の都道府県別 ↩
※2 総務省統計局「統計でみる都道府県のすがた2026」民営賃貸住宅の家賃 ↩
※3 月給は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第8図で愛知県341.6千円・島根県282.6千円、家賃は総務省統計局「統計でみる都道府県のすがた2026」で愛知県5,229円・島根県3,871円。表の県と同じ資料で、差は編集部の計算 ↩
※4 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」都道府県別、総務省統計局「統計でみる都道府県のすがた2026」。家賃は県庁所在市の価格から編集部が25平方メートルに直した額 ↩
※5 厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」表13-1 ↩
数字は、出典の定義(誰の数字か・いつの数字か)のまま使っています。計算した数字には「計算の例」と書いています。編集方針
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