年収が下がる転職、許容範囲は?1年目の手取りと住民税から決める
先に結論
年収が下がる転職の許容範囲は、住民税がまだ下がらない1年目の手取りで確かめましょう。毎月の生活費と貯金に、今の住民税と、あとで増える税に備える余裕(例えば月2,000円)を足し、給与明細から出した「残る割合」で割った額が、下げてよい月給の下限です。
この記事の目次
内定の書面を開いたら、月給が今より4万円低かった。仕事の中身にも働き方にも納得しているのに、額面の差を見ると、本当に暮らしていけるのかと手が止まる。
この記事では、年収が下がったときに手取りがいくら減るかを1年目とそのあとに分けて計算し、下げてよい月給の下限を出す手順をまとめます。
転職で賃金が減った人の多くは、1割以上減っている
国の調査で、2025年の1年間に転職した人の賃金を前の職場と比べると、次のとおりでした※1。
| 前の職場と比べた賃金 | 25〜29歳 | 30〜34歳 |
|---|---|---|
| 減った | 23.9% | 29.0% |
| うち1割以上減った | 16.5% | 19.0% |
賃金が減った人のうち1割以上減った人は、25〜29歳で約7割、30〜34歳で約3分の2です(編集部の計算)。
転職で賃金が下がるときは、1割以上下がることのほうが多いということです。下がる転職を考えるなら、1割以上下がる前提で、手取りを計算しておきましょう。提示が出ているなら、その額で計算してください。
手取りは額面ほど減らない。ただし1年目は住民税が下がらない
- 社会保険料(健康保険・厚生年金など):入社したときの給与の額で決まり、入社した月から新しい額になる※2。給与から引く月は、会社によって1カ月ずれることがある
- 所得税:毎月の給与に応じて引かれ、新しい給与に合わせて下がる
- 住民税:前の年の所得で決まり、6月から翌年5月まで給与から引かれる※3。入社してしばらくは、前の会社の年収で決まった額のまま
月給が36万円から32万円に下がる場合を、仮の数字で計算しました。
| 1カ月あたり | 転職前 | 1年目(入社から翌年5月まで) | 住民税が追いついたあと |
|---|---|---|---|
| 額面(月給) | 36万円 | 32万円 | 32万円 |
| 社会保険料 | 5万2,900円 | 4万7,000円 | 4万7,000円 |
| 所得税 | 5,700円 | 4,400円 | 6,200円 |
| 住民税 | 1万6,500円 | 1万6,500円 | 1万3,800円 |
| 手取り | 28万4,900円 | 25万2,100円 | 25万3,000円 |
(計算の例。前提:東京都・協会けんぽ・40歳未満・扶養なし・賞与なし・残業代と通勤手当なし・前の年も同じ月給。社会保険料は2026年度の料率、住民税は2026年の所得にかかる決まりで計算し、年が変わっても同じとした。所得税は年末調整のあとの1年分を12で割った額で、基礎控除は、1年目までは2026・2027年分の104万円、住民税が追いついたあとは2028年分からの予定の62万円で計算した)※4
額面は月4万円下がりますが、1年目の手取りの減り方は月3万2,800円(約3.3万円)です。社会保険料と所得税も、新しい月給に合わせて下がるからです。
一方で、住民税は1年目も1万6,500円のままです。今から入社する人は、住民税が追いつくのが早くても2028年6月で、2028年分からは所得税の基礎控除が下がる予定です。そのため、追いついたあとは所得税が1年目より月1,800円ほど増え、手取りは1年目より月900円多いだけです。
2028年1月から住民税が追いつくまでの月は、所得税だけが増えるので、手取りは表の1年目より最大で月1,800円ほど少なくなる計算です。
この計算の例では、住民税が追いついても、手取りはほとんど増えません。下げてよいかどうかは、1年目の手取りで、生活費と貯金のほかに、あとで増える税の分の余裕(この計算の例なら月2,000円ほど)が残るかで確かめましょう。
住民税が新しい年収に追いつくのは、入社した翌々年から
入社した年の所得には前の会社の給与も入るので、新しい会社の給与だけで決まった住民税が引かれ始めるのは、翌々年の6月からです。4月に入社した場合は、次のとおりです。
| 給与から引かれる時期 | 住民税を決める所得 | 住民税の額 |
|---|---|---|
| 入社した4月から翌年5月まで | 前の会社にいた年の所得 | 前の年収で決まった額のまま |
| 翌年6月から翌々年5月まで | 入社した年の所得(1〜3月は前の会社、4〜12月は新しい会社) | 一部が下がる |
| 翌々年6月から | 新しい会社の所得だけ | 新しい年収に合った額 |
1月に入社し、その年に前の会社の給与がない人は、翌年6月から新しい年収に合った額になります。
辞める月によっては、住民税をまとめて払う月が出ます。1〜4月に辞めると、5月分までの残りを、最後の給与などからまとめて引かれるのが原則です。6〜12月に辞めると、申し出ればまとめて引いてもらえます(どちらも、5月31日までに払われる給与などが残りより多い場合)。給与などが残りより少ないときや、6〜12月に辞めて申し出ないときは、納付書で自分で納めます。次の会社の給与から続けて引いてもらう手続きもあります※5。
下げてよい月給の下限を出す手順
許容範囲は、「1割まで」のような決まった割合ではなく、あなたの生活費と貯金から決まります。
下限は、年収ではなく、賞与を除いた月給で出します。年収で提示されたら、賞与と残業代の見込みを除いて12で割り、月給に直して比べてください。
次に当てはまるときは、下限を出す前に、生活費や使う数字を直してください。
- 社宅など、年収に出ない条件が変わる:社宅がなくなるなら、増える家賃を生活費に足してください
- 40歳以上、扶養する家族がいる、東京都以外に住んでいる、健康保険組合に入っている:計算の例とは数字が変わるので、自分の給与明細の数字を使ってください
- 同じ職種で、働き方も変わらないのに年収が下がる提示:下限を出す前に、その額が相場どおりかを確かめてください
給与明細と家計のメモを見て、順に書き出してください。
| 手順 | 書き出すこと | 出し方 |
|---|---|---|
| 1 | 毎月の生活費 | 家賃・光熱費・通信費・保険・返済などの固定費に、食費などを足す |
| 2 | 毎月の貯金 | 転職後も続けたい額 |
| 3 | 今の住民税 | 給与明細の住民税の額。1年目は変わらないので、そのまま使う。ただし、明細の住民税は前の年(1〜5月の明細は前の前の年)の年収で決まるので、そのあと年収が大きく増えた人は、6月から上がる分を足す |
| 4 | 残る割合 | 1-(社会保険料の合計+所得税)÷(総支給額-通勤手当)。社会保険料は、明細の健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・厚生年金・雇用保険を足す |
| 5 | 下限の月給 | (生活費+貯金+今の住民税+余裕)÷残る割合。余裕は、あとで所得税や社会保険料が増える分を先に見ておくためのもの。増える額は人によって違い、決まった額は無いので、例えば月2,000円と仮に置く。増やすと下限は高めに出るが、そのぶん安全側 |
提示の月給が下限を下回るなら、承諾の返事をする前に、月給の相談をするか、生活費や貯金を見直して下限を出し直せるかを考えてください。それでも下回るなら、承諾を見送りましょう。
次は想定の例で、数字はこの記事の前提で計算した概算です。
例:31歳・法人営業。未経験の人事職に内定し、月給は34万円から27万円に下がる。 生活費は20万円、貯金は月1万5,000円。明細の住民税は1万5,200円、残る割合は84%で、余裕を月2,000円と仮に置くと、下限は約27万6,400円。提示の27万円は、この下限を下回る。1年目の手取りは約21万1,000円で、生活費と貯金に月4,000円ほど足りない。2028年分から所得税が増える予定のため、住民税が追いついたあとも約21万3,600円で、月1,400円ほど足りない。 → この人は、足りない月が続くので、貯金を月5,000円に減らして下限を出し直します。下限は約26万4,500円になり、提示の27万円はこの下限を上回るので、この人は承諾の返事をします。
次の一歩は、給与明細から2つの数字を書き出すこと
今週のうちに、今月の給与明細を出して、住民税の額と残る割合をメモに書いてください。この2つがあれば、生活費と貯金、余裕(例えば月2,000円)を足すだけで、下げてよい月給の下限が出せます。内定の書面が届いたら、内定2社で迷ったら|承諾前に書面と質問で条件を比べる方法の表で、月給の内訳まで確かめてください。
出典・注記(5件)
※1 厚生労働省「雇用動向調査」令和7年 表6。パートタイムで働く人も含む ↩
※2 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」 ↩
※3 総務省「個人住民税」、東京都主税局「個人住民税と特別徴収について」 ↩
※4 協会けんぽ東京支部「令和8年度保険料額表」、厚生労働省「令和8年度 雇用保険料率のご案内」、国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」令和8年4月、品川区「特別区民税・都民税の税額の計算方法」 ↩
※5 地方税法第321条の4・第321条の5・第321条の7 ↩
数字は、出典の定義(誰の数字か・いつの数字か)のまま使っています。計算した数字には「計算の例」と書いています。編集方針
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