内定2社で迷ったら
承諾前に書面と質問で条件を比べる方法
先に結論
内定2社は、口頭の約束ではなく書面の条件で比べましょう。書面にない条件は、承諾の前に質問して、メールで残してもらいましょう。
この記事の目次
2社から内定の連絡が届いた。長かった転職活動がやっと実を結んで、ほっとしたはずなのに、2通の通知書を並べると手が止まる。
A社は、提示された年収が高い。B社は面接の雰囲気がよく、面接官から「残業は少なめですよ」と言われた。どちらを選んでも、断ったほうの会社を後で惜しく思いそうな気がする。
うれしいのに不安になるのは、あなたが優柔不断だからではありません。今の会社を辞めるかどうかを何度も考えてきた人にとって、この返事で、この先の数年をどこで働くかが決まります。迷うのは自然なことです。
ただ、2社を比べているつもりでも、比べている条件の中に「面接で聞いただけの話」が混ざっていることがあります。
この記事では、2社で迷う気持ちの正体を3つに分けたうえで、承諾の返事をする前に、2社の条件を書面と質問で比べる手順をまとめます。
25〜34歳で転職して賃金が上がった人は、およそ半分
国の調査では、2025年に転職して新しい職場に入った人の賃金が、前の職場と比べてどう変わったかをまとめています。25〜29歳と30〜34歳の結果は、次のとおりでした(出典:厚生労働省「雇用動向調査」令和7年 表6)。
| 前の職場と比べた賃金 | 25〜29歳 | 30〜34歳 |
|---|---|---|
| 上がった | 49.8% | 48.6% |
| 変わらない | 25.0% | 20.8% |
| 下がった | 23.9% | 29.0% |
どちらの年代でも、転職して賃金が上がった人はおよそ半分です。下がった人も、25〜29歳でおよそ4人に1人、30〜34歳では10人に3人近くいます。
転職すれば賃金が上がる、とは限りません。内定で示された年収が今より高く見えても、それだけで「年収が上がる」と決めないでください。提示年収には、賞与の見込み額や固定残業代が含まれていることがあるからです。
もう1つ、転職した人に「転職活動を始めた理由」を聞いた調査があります。上位3つは、次のとおりでした(出典:マイナビ「転職動向調査2026年版」2025年実績、複数回答)。
- 1位 給与が低い:23.2%
- 2位 仕事内容への不満:21.0%
- 3位 職場の人間関係:20.0%
給与・仕事内容・人間関係の3つは、ほぼ同じくらい多く挙がっています。次の会社で確かめたいことは、年収だけではありません。
2社を比べるときも、年収だけでなく、仕事内容や人間関係まで見る必要があります。ただし、条件によって確かめ方が違います。
年収は、提示された総額ではなく、書面に書かれた内訳で比べてください。
仕事内容と職場の人間関係は、年収の数字には表れません。仕事内容は書面に大まかにしか書かれないことがあり、人間関係は書面にはまず書かれません。この2つは、会社に質問して確かめましょう。
迷いの正体は、3つに分けられる
2社のどちらにするか決めきれないとき、迷いの中には、たいてい次の3つが混ざっています。
| 迷いの正体 | よくある感じ方 | 確かめれば解けるか |
|---|---|---|
| 書面の条件の差 | A社は年収が高いが、B社は休日が多い | 解ける。並べれば差がはっきりする |
| 口頭だけの条件 | 「残業は少なめ」と聞いたが、書面には書いていない | 解ける。書面か、数字の答えをもらう |
| 自分の優先順位 | 年収と働きやすさの、どちらを取るか決められない | 解けない。自分で1つ選ぶ |
見分けるには、「この条件は、書面のどこに書いてあるか」と自分に聞いてみてください。
書面に書いてあるなら、その条件はA社とB社で比べられます。書いていないなら、その条件はまだ「面接で聞いた話」です。
面接で聞いた「残業は少なめです」「在宅もできますよ」は、話してくれた人の感覚や、その部署の今の様子です。うそではなくても、入社したあとも同じとは限りません。
書面の条件は、会社が労働条件として示した内容です。入社したあとで話が違ったとき、根拠として見せられるのは書面のほうです。
分けてみると、迷いの中心が「口頭だけの条件」だった、という場合があります。
たとえば、B社に惹かれている理由が「残業は少なめと聞いたから」なら、残業が本当に少ないかどうかは、まだ確かめられていません。配属予定の部署で月に何時間くらい残業があるかを聞くまでは、A社とB社の残業を比べる材料はそろっていません。
自分の優先順位は、情報をいくら集めても決まりません。ただ、書面の条件の差と口頭だけの条件を先に片づけておけば、最後に自分で選ぶ項目は少なくなります。
ここからは、書面の条件と口頭だけの条件を、順番に確かめていきます。
比べる前に、先に済ませておくこと
回答期限が迫っているなら、先に延長を相談してください。条件の書面をまだ受け取っていないなら、先に交付を求めましょう。
回答期限の延長を頼むときは、理由と、返事ができる日付をそろえて伝えてください。日付があれば、採用担当者も待てるかどうかを判断しやすくなります。
内定のご連絡をいただき、ありがとうございます。前向きに考えており、条件を確かめたうえで、責任をもってお返事したいと思っています。恐れ入りますが、〇月〇日までお返事をお待ちいただくことはできますでしょうか。
延長が難しいと言われたら、期限までに確かめられた条件だけで2社を比べてください。
条件の書面については、法律の決まりを知っておくと頼みやすくなります。会社は労働契約を結ぶときに、賃金・労働時間・就業場所・業務などの条件を、原則として書面で示すことになっています。本人が希望すれば、紙に出力できるメールなどで受け取ることもできます。就業場所と業務については、入社直後の内容に加えて「変更の範囲」も示すことになっています(2024年4月から)(出典:労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条)。
承諾の前に、これらの条件を書面で受け取ってください。内定通知書しか届いていないなら、採用担当者に「労働条件通知書をいただけますか」と頼みましょう。
内定通知書に年収の総額しか書かれていないときは、基本給・固定残業代・賞与・手当の内訳を、書面かメールで求めてください。
2社の条件を、書面で比べる表
まず、内定と一緒に受け取った書面を用意してください。内定通知書のほか、労働条件通知書や雇用契約書、会社によってはオファーレターと呼ばれる書面です。
次に、2社の条件を1枚の表に並べましょう。金額や時間を書き込むときは、その条件をどこで確かめたかを、印で分けておいてください。
- ○:書面か、会社からのメールで示された
- △:面接や電話で聞いただけ
- ×:まだ聞いていない
| 比べる項目 | 書面で見ること | A社 | B社 |
|---|---|---|---|
| 基本給 | 月額。手当と固定残業代を除いた額 | ||
| 固定残業代 | 何時間分で、月いくらか。超えた分が別に支払われるか | ||
| 賞与 | 計算の方法。提示年収に見込み額が入っているか | ||
| 手当 | 種類と、支給される条件 | ||
| 勤務地 | 入社直後の勤務地と、変更の範囲 | ||
| 仕事内容 | 入社直後の仕事と、変更の範囲 | ||
| 勤務時間・休日 | 始業と終業の時刻、休日と休暇 | ||
| 試用期間 | 期間の長さと、その間の給与 | ||
| 入社日 | 書面に書かれた入社日 |
印が△か×の項目は「未確認」のまま残し、推測で埋めないでください。推測で埋めると、まだ知らない条件を、確かめた条件と同じ重さで比べてしまうからです。
表を埋めるときは、次の点に気をつけてください。
提示年収は、4つに分けてから比べてください。基本給・固定残業代・賞与・手当の4つです。
年収の総額が同じでも、A社は賞与の見込みが多く、B社は毎月の給与が多い、ということがあります。その場合、毎月の手取りも、受け取れる額の確かさも、2社で違ってきます。
賞与が提示年収に入っているなら、約束の額か、見込みの額かを確かめてください。書面に「業績により変動」と書かれていれば、賞与の分は毎年同じとは限りません。
固定残業代は、対象の時間と金額を見てください。固定残業代は、決まった時間分の残業代を、あらかじめ月給に含めて払うしくみです。書面に対象の時間と金額が書かれていなければ、固定残業代の欄は○にせず、質問に回してください。
固定残業代の対象時間は、実際の残業時間とは別のものです。残業の実態は、配属予定の部署の実績として、別に質問しましょう。
勤務地と仕事内容は、「変更の範囲」の欄まで読んでください。転勤や職種の変更がありうるかは、この欄で分かります。書面に「変更の範囲」が書かれていなければ、承諾の前に会社に聞いてください。
入社日は、それまでに今の会社の引き継ぎを終えられるかを見てください。在職中に転職した人に、内定をもらってから入社するまでの期間を聞いた調査では、「1〜2カ月」が63.8%で最も多く、平均は48.5日でした(出典:マイナビ「転職動向調査2026年版」2025年実績)。
内定から1〜2カ月あとに入社するのは、珍しいことではありません。書面の入社日が早すぎて、今の会社の引き継ぎが間に合わないなら、承諾の前に入社日を相談してください。
表が埋まったら、書面の条件を、面接で聞いた話と見比べましょう。違うところがあれば、承諾の前に、会社に理由を聞いてください。
書面に出にくい条件は、質問で確かめる
残業の実態、在宅勤務の使われ方、評価のしくみ、配属先の上司は、書面には書かれにくい条件です。承諾の返事をする前に、会社に質問して確かめましょう。
「残業は多いですか」と聞くだけでは、採用担当者と自分とで「多い」の感覚が違うことがあります。時間や回数で答えてもらえる聞き方にすれば、答えをそのまま表に書き込めます。表にない項目は、下に行を足して書き込んでください。
- 残業の実態:「配属予定の部署では、残業は1人あたり月に何時間くらいでしょうか」
- 固定残業代:「固定残業代は何時間分で、月いくらでしょうか。その時間を超えた分は、別に支払われますか」
- 賞与:「提示いただいた年収に、賞与の見込み額は含まれていますか。昨年度の支給実績も教えていただけますか」
- 在宅勤務:「配属予定の部署では、在宅勤務は週に何日くらい使われていますか」
- 評価と昇給:「評価は年に何回あり、どなたが評価を担当されますか。評価の結果は、給与にどう反映されますか」
- 配属先の上司:「入社前に、配属予定の部署の上司の方とお話しする機会をいただけますか」
質問は、会社ごとに1通のメールにまとめて送りましょう。メールの書き出しには、質問する理由を1文添えてください。
内定のご連絡をいただき、ありがとうございます。入社を前向きに考えており、条件を正確に理解したうえでお返事したいと思っています。つきましては、次の点を教えていただけますでしょうか。
コツは、「前向きに考えている」「正確に理解したい」と理由を添えることです。条件を疑っていると受け取られにくくなり、採用担当者も身構えずに答えられます。
電話や面談で答えをもらったときは、その日のうちに「本日伺った内容の確認です」と、聞いた内容を採用担当者へメールで送っておきましょう。口頭の答えも、メールに残しておけば、あとで見返せます。
採用担当者から「その内容で合っています」と返信があれば、表の印を○に変えてください。ただし、答えが「今はこうです」という現状の説明なら、約束ではありません。印の横に「実績」と書き添えておきましょう。
転職エージェント経由の内定なら、質問はエージェントの担当者に頼めます。自分では聞きにくい項目も、担当者を通せば聞きやすくなります。
会社の答えに応じて、次のように判断してください。
- 書面やメールで、数字を示して答えてくれた:表の印を○に変えて、2社を比べる。
- 答えてくれたが、曖昧だった:「部署による」「頑張り次第」で止まったら、一度だけ、最近の例を挙げてもらうよう頼む。
- 答えてくれない、はぐらかされた:譲れない条件が未確認のままなら、その会社には承諾の返事をしない。
どちらにするかは、譲れない条件で決める
○・△・×の印がそろったら、最後に自分の優先順位を決めましょう。年収、勤務地、残業、仕事内容などのうち、これだけは譲れない条件を1つだけ選んでください。
1つに絞るのは、すべての条件を同じ重さで比べると、A社とB社の良いところが並んでしまい、迷いが続くからです。
譲れない条件が決まったら、その条件がA社とB社の書面でどうなっているかを見てください。次の表に上の行から順に当てはめ、最初に当てはまった行で決めてください。
| 譲れない条件の状態 | 次の一歩 |
|---|---|
| どちらかの会社で、△か×のまま | 承諾の前に、その会社へ質問を送る |
| 片方の会社だけが、書面で満たしている | その会社を第一候補にする。ほかの条件にも受け入れられない点がなく、必要な確認が済んでから承諾の返事をする |
| 両方の会社が、書面で満たしている | 次に譲れない条件を1つ選び、同じように比べる |
| どちらの会社も、書面で満たしていない | どちらも承諾せず、今の会社に残るか、転職活動を続けるかを考え直す |
内定をもらった以上、どちらかに決めなければ、と感じるかもしれません。でも、譲れない条件を書面で満たしていない会社に、無理に決める必要はありません。
年収や勤務地のほかに何を確かめたいか迷うときは、辞めたい理由を5つの軸で整理する方法で、今の会社への不満を整理してください。そこで見つかった不満を、内定先への質問に変えましょう。
承諾と辞退は、書面と答えがそろってから
どちらの会社にするか決めたら、次の順番で進めてください。
- 承諾する会社から条件の書面を受け取り、質問への答えもメールで残っていることを確かめる
- 承諾する会社に、承諾の返事をする
- もう一方の会社に、辞退を伝える
- 今の会社に、退職の意思を伝える
先に辞退したり、今の会社に退職を伝えたりすると、承諾する会社の条件が変わったときに、戻れる場所がなくなります。
辞退は、承諾の返事をした当日か翌営業日に伝えましょう。早く伝えるほど、相手の会社も次の候補者に早く連絡できます。
エージェント経由で応募した会社なら、エージェントの担当者に伝えれば、企業へ連絡してもらえます。直接応募した会社なら、電話かメールで採用担当者に伝えてください。
辞退の理由は短くて構いません。「他社への入社を決めた」で十分です。比べた中身や、相手の会社の弱いところは書かないでください。
このたびは内定のご連絡をいただき、ありがとうございました。慎重に考えた結果、今回は辞退させていただくことにいたしました。面接で伺った〇〇のお話は、今後の仕事でも参考にいたします。またご縁がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
〇〇には、面接で実際に聞いた話を1つ入れてください。話をきちんと受け止めていたことが伝わり、関係を切らずに終えられます。
3つの場面で考える(例)
同じ「内定2社で迷う」でも、答えは人によって分かれます。以下は、判断の違いを見せるための想定の例です。
例1:27歳・事務。A社は提示年収が高く、B社は面接官の印象がよかった。 書面を並べると、A社の提示年収には賞与の見込み額が入っていて、「業績により変動」と書かれていた。毎月の基本給は、B社のほうが高かった。譲れない条件は「毎月の収入が安定していること」。 → B社の基本給が高いだけでは、毎月の収入が安定しているとは言えません。この人は、A社とB社で毎月支払われる額と、自分に必要な毎月の生活費を比べてから決めます。毎月の額で生活費をまかなえるのがB社だけなら、B社を第一候補にして、ほかの条件を確かめます。
例2:30歳・営業。A社の回答期限が週明けに迫っている。B社では、面接で「在宅もできます」と聞いた。 A社の書面には、在宅勤務の制度があると書かれていた。B社の書面には勤務地しか書かれておらず、在宅勤務の記載はない。譲れない条件は「在宅勤務を週に何日か使えること」。 → A社の書面にあるのは制度で、自分の配属先で使えるかまでは分かりません。B社の在宅勤務は△のままです。この人はA社に回答期限の延長を頼み、2社の両方に、自分の配属先で在宅勤務を使える条件をメールで確認します。確認できないうちは、承諾の返事をしません。
例3:32歳・ITエンジニア。A社もB社も、今の会社より提示年収が高い。 ただ、2社とも、書面の勤務地の「変更の範囲」に全国の事業所が含まれていた。譲れない条件は「転勤がないこと」。質問しても、2社とも「転勤の可能性はある」という答えだった。 → 転勤がないという条件を、どちらの会社も書面で満たしていません。この人はどちらも承諾せず、今の会社に残るか、転職活動を続けるかを考え直します。
次の一歩は、2社の書面を並べること
今日のうちに、A社とB社の書面を並べて、2社の条件を比べる表に○・△・×の印を付けてください。
全部の項目を一度に埋める必要はありません。回答期限が迫っているなら、譲れない条件の行だけでも構いません。
2社で迷うのは、どちらの会社のことも真剣に考えているからです。焦らなくて大丈夫です。
この記事の図解
参考にした統計・資料
- 厚生労働省「雇用動向調査」令和7年 表6
- マイナビ「転職動向調査2026年版」2025年実績
- 労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条
数字は、出典の定義(誰の数字か・いつの数字か)のまま使っています。計算した数字には「計算の例」と書いています。編集方針
