退職日は月末か、月末の前日か
次の入社日から社会保険料の差を確かめる
先に結論
次の会社に翌月1日に入るなら、退職日は月末(入社日の前日)が基本で、月末の前日に辞めて浮く1カ月分の保険料の多くは、国民年金と国民健康保険で払い直すことになります。退職した月に賞与が出る人と、家族を扶養に入れている人は、差し引きを別に確かめましょう。
この記事の目次
上司に退職の意思を伝え、あとは退職日を決めるだけになった。「月末に辞めると、社会保険料が1カ月分よけいにかかる」と聞いたことがあり、前日にした方がいいのか迷っている。
ただ、次の会社の入社日とどう関係するのかまでは、よく分からない。
この記事では、月末に辞めた場合と月末の前日に辞めた場合の保険料の違いを、次の入社日との組み合わせで確かめ、退職日の決め方をまとめます。
月末の前日に辞めると、前の会社で引かれる保険料が1カ月分減る
会社の健康保険と厚生年金の資格は、退職日の翌日に失います。保険料がかかるのは、資格を失う日が属する月の前月の分までです。月末に辞めると資格を失うのは翌月1日なので、退職した月の分までかかります。月末の前日に辞めると、資格を失う日が退職した月の中に入るので、その月の分はかかりません※1。
1カ月分の額は、協会けんぽ東京支部の保険料額表で確かめられます。標準報酬月額30万円・40歳未満の人の本人負担は、健康保険14,775円、子ども・子育て支援金345円、厚生年金27,450円で、合わせて42,570円です※2。健康保険の料率は都道府県ごとに少し違い、40〜64歳の人は介護保険料のぶんがさらに加わります。
「月末に辞めると損」と言われるのは、この1カ月分のことです。ただし、浮くのは前の会社で引かれる分だけです。その月に保険に入らなくてよくなるわけではありません。
翌月1日に入社するなら、浮いた分の多くを自分で払い直す
月末の前日に辞めて翌月1日に入社すると、退職した月の月末の1日だけ、どの会社にも属さない日ができます。
国民年金では、加入の種類が変わった月は、変わったあとの種類の月とみなされます※3。月末の1日で、会社員の第2号から、自営業の人などと同じ第1号に変わるので、退職した月は第1号の月になります。その月の国民年金保険料は、自分で払います。2026年度の国民年金保険料は月17,920円です※4。
健康保険も同じです。会社の健康保険の資格を失った日から、国民健康保険に入ります※5。国民健康保険料は月割りで、加入した月の分からかかります※6。額は前の年の所得と住んでいる市区町村で決まるので、計算の仕方も含めて市区町村で確かめてください。
先ほどの標準報酬月額30万円の人なら、42,570円から国民年金の17,920円を引くと、残りは24,650円です。国民健康保険の1カ月分が24,650円を超える人は、月末の前日に辞めると、かえって払う額が増えます。下回る人でも、手元に残るのは差額だけです(退職した月に賞与が出る人と、家族を扶養に入れている人は、表のあとの、賞与と扶養の段落を読んでください)。
差額のほかに、次の3つがついてきます。
- 国民年金の加入(第1号)の届け出と、国民健康保険の加入と脱退の届け出を、自分で市区町村にする。国民健康保険の届け出は、加入も脱退も14日以内とされている※7
- 厚生年金に入っている期間が1カ月減る。将来の老齢厚生年金のうち、平成15年4月以降の期間の分は「平均標準報酬額×5.481÷1000×加入した月数」で計算するので、標準報酬月額30万円の1カ月は、再評価率を考えない概算で、年に約1,600円(30万円×5.481÷1000)の差になる※8
- 月末が出勤日なら、その1日分の給与が日割りで減ることがある。日割りにするかは、会社の給与の決まりで確かめる
次の入社日から退職日を決める表
基本は、退職日を入社日の前日に置くことです。会社の保険が切れ目なくつながるので、自分で払う保険料も、自分でする届け出も生まれません。
| 次の入社日 | 退職日 | 前の会社で引かれる保険料 | 自分で払う・届け出るもの |
|---|---|---|---|
| 翌月1日 | 月末(入社日の前日) | 退職した月の分まで | なし |
| 翌月1日 | 月末の前日 | 退職した月の前月の分まで | 退職した月の国民年金と国民健康保険。加入と脱退の届け出 |
| 月の途中(16日など) | 入社日の前日(15日など) | 退職した月の前月の分まで | なし。退職した月の分は次の会社で払う |
月末の前日に辞めると、会社の側も、その月の会社負担の保険料がかからなくなります。月末の前日を勧められても、自分の側の差し引きで決めましょう。
表が当てはまらない人もいます。
退職日を入社日の前日に動かせず、入社まで数日以上あく人は、月末に辞めても前日に辞めても、あいだの期間の届け出は省けません。日本年金機構は、3月末に辞めて4月16日に入社する場合、4月の国民年金保険料は要らないものの、4月1日付の第1号の加入の手続きは要るとしています※9。手続きが避けられない分、比べるのは保険料の差し引きだけになります。
次の会社にすぐ入らず、配偶者の扶養に入る人は、月末の前日に辞めて退職した月から扶養に入れば、その月の国民年金と国民健康保険がかからないことがあります。扶養に入れるかは、配偶者の勤め先の健康保険の条件で決まるので、先に確かめてください。
退職した月に賞与が出る人は、別に比べてください。先に、賞与の支給日が退職日より前かを確かめます。支給日が月末で、支給日の在籍が条件なら、月末の前日に辞めると賞与を受け取れません。支給日が退職日より前なら、資格を失う月に払われた賞与には、保険料がかかりません※10。月末の前日に辞めると、その月の分に加えて、賞与の保険料も浮きます(先に引かれていたら、返してもらえるかを人事に確かめてください)。標準報酬月額30万円・40歳未満で賞与が50万円なら、浮くのは約11.4万円で、国民年金と国民健康保険の1カ月分を引いても、多くが手元に残ります※11。一方、その月と賞与の分は将来の厚生年金の計算から外れ、年金は年に約4,400円少なくなります(再評価率を考えない概算)。退職した月の国民年金と国民健康保険を払い、届け出をするのは同じです。
配偶者や子どもを扶養に入れている人は、24,650円の境目が当てはまりません。会社の保険から外れると、扶養していた家族も国民健康保険に入り、配偶者は国民年金の保険料も払うことになるので、退職した月に賞与が出なければ、月末の前日に辞めると、払う額が増えることがほとんどです。
12月1日に入社が決まった場面で考える(例)
以下は、想定の例です。
例:29歳・東京の会社に勤める営業職。協会けんぽに入っていて、標準報酬月額は30万円。内定先の入社日は12月1日。上司から「11月29日(日)付にすると保険料が浮く」と言われた。11月に賞与は出ず、扶養している家族はいない。住んでいる市区町村の試算では、国民健康保険料の1カ月分は約2万円。
→ この人は、11月29日に辞めると、浮く42,570円から国民年金の17,920円と国民健康保険の約2万円を引いて、手元に残るのは約4,650円です。そのために市区町村で届け出を3つし、将来の厚生年金も年に約1,600円減ります。この人は、退職日を入社日の前日の11月30日(月)にして、上司に伝えます。
次の一歩は、入社日を書面で確かめてから退職日を伝えること
今週のうちに、内定先の労働条件通知書で入社日を確かめ、その前日を退職日として上司に伝えましょう。月末の前日を勧められたときは、住んでいる市区町村で国民健康保険料の1カ月分を確かめ、前の会社で浮く額から国民年金の17,920円を引いた額と比べてから決めてください。
賞与の支給日が退職日の決め方にからむなら、ボーナスをもらってから辞めるにはで、支給条件から退職日を決める手順を確かめられます。
出典・注記(11件)
※1 日本年金機構「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」 ↩
※2 協会けんぽ「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」東京都 22等級 ↩
※3 国民年金法第11条の2 ↩
※4 日本年金機構「国民年金保険料」令和8年度 ↩
※5 国民健康保険法第7条 ↩
※6 川崎市「国民健康保険に月の途中で加入、脱退したときの保険料の支払いはどのようになりますか。」 ↩
※7 厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」 ↩
※8 日本年金機構「年金用語集 報酬比例部分」 ↩
※9 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」 ↩
※10 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」 ↩
※11 協会けんぽ「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」東京都 22等級の料率から編集部が計算 ↩
数字は、出典の定義(誰の数字か・いつの数字か)のまま使っています。計算した数字には「計算の例」と書いています。編集方針
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