みなし残業の求人票の見方
月給の内訳を確かめる3つのポイント
先に結論
みなし残業の求人は、月給を基本給・固定残業代・その他の手当に分けて比べましょう。固定残業代が何時間分か、その時間を超えた分が別に払われるかも、必ず確かめてください。
求人票を見比べていたら、A社の月給が高く見えた。でも、よく見ると「固定残業代を含む」と書いてあって、月給のうち基本給がいくらなのかがよく分からない。
月給の数字だけで選んで、入社してから「思っていたより基本給が低かった」と気づくのは避けたいところです。
この記事では、求人票の月給を基本給・固定残業代・手当に分けて読む方法と、確かめるポイントをまとめます。
厚生労働省は、求人票に3つの明示を求めている
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークのリーフレットでは、固定残業代制を採用する場合、募集要項や求人票に次の3つをすべて明示するよう、事業主に求めています。若者雇用促進法に基づく指針をもとにした内容です(出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」)。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
- 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して、割増賃金を追加で支払う旨
リーフレットのとおりに書かれた求人票なら、基本給、固定残業代の時間数と金額、その時間を超えた分の支払いの3つが読み取れるはずです。どれかが欠けている求人票は、そのままでは他社と比べられません。
同じリーフレットには、ハローワークに寄せられた「求人票の記載内容と実際の労働条件が違う」という申出・苦情のうち、一番多い内容が「賃金に関すること(固定残業代を含む)」だったことも載っています(出典:同リーフレット、厚生労働省職業安定局調べ・平成27年度)。求人票の給与の欄は、内訳まで自分で確かめてください。
月給が高く見えても、基本給は低いことがある
計算の例で見てみます。次の2つの求人を並べます。
- 月給30万円=基本給22万5,000円+固定残業代7万5,000円(30時間分)
- 月給26万円=基本給26万円(固定残業代なし、残業代は別に支給)
月給では30万円の求人が4万円高く見えますが、基本給では26万円の求人より3万5,000円低くなります(計算の例)。
月給30万円の求人の7万5,000円は、30時間分の残業に対して定額で払われる残業代です。一方、月給26万円の求人でも、残業をすればその分の残業代が別に払われます。月給30万円には残業代が入っていて、月給26万円には入っていないので、月給の差だけでは、同じ時間働いたときの給与は比べられません。
月給から固定残業代を引いた額が、そのまま基本給とは限りません。職務手当などの手当が含まれていれば、その分は基本給ではありません。月給は、基本給・固定残業代・その他の手当の3つに分けて確かめてください。
基本給の差は、毎月の給与だけの話でもありません。賞与を「基本給の○カ月分」と決めている会社なら、基本給の差がそのまま賞与の差になります。賞与が基本給の2カ月分なら、月給30万円の求人は45万円、月給26万円の求人は52万円で、7万円の差です(計算の例)。
固定残業代は、求人票で「固定残業代」という名前で書かれているとは限りません。リーフレットでは、名称にかかわらず、一定時間分の時間外労働・休日労働・深夜労働に対して定額で払われる割増賃金を「固定残業代」と呼んでいます。「○○手当」とだけ書かれていたら、まずその手当に固定残業代が含まれるかを確かめてください。含まれるなら、固定残業代の金額と時間数、その他の手当の金額を、それぞれ分けて確かめてください。
時間外労働だけでなく、休日労働や深夜労働の分まで固定残業代に含む求人もあります。その場合は、リーフレットの記載例のように、時間外労働・休日労働・深夜労働のそれぞれについて何時間分を含むか、超えた分が追加で支給されるかを確かめてください。
ただし、固定残業代があること自体が、悪い求人のしるしではありません。リーフレットの記載例は「時間外労働の有無にかかわらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給」という形です。このように書かれていれば、残業が少ない月も固定残業代は支払われます。比べるときは、基本給や手当の金額と、実際の残業時間をあわせて見てください。
求人票で確かめる3つのポイント
求人票の給与の欄で、次の3つを確かめてください。
| 確かめること | 求人票で見るところ | 書かれていないときの聞き方 |
|---|---|---|
| 固定残業代を除いた基本給の額 | 給与の欄の内訳。「基本給○円(□□手当を除く)」の形 | 「月給のうち、基本給・固定残業代・その他の手当は、それぞれいくらですか」 |
| 固定残業代の時間数と金額 | 手当の欄。「○時間分の時間外手当として△円」の形 | 「固定残業代は、何時間分でいくらですか」 |
| その時間を超えた分の支払い | 「○時間を超える時間外労働分は追加で支給」の一文 | 「固定残業代の時間を超えた分は、別に支払われますか」 |
求人票でこの3つがそろわないときは、応募の前に採用担当や転職エージェントに聞くか、面接の最後の質問の時間に聞きましょう。
聞いて分かった金額と時間数が、内定のときに受け取る労働条件の書面にも同じように書かれているかを確かめてください。
想定の例で考える
以下は、比べ方の流れを見せるための想定の例です。
例:27歳・営業事務。A社は月給28万円=基本給21万円+固定残業代5万円(20時間分、超えた分は追加で支給)+職務手当2万円。B社は月給25万円=基本給25万円(固定残業代・手当なし、残業代は別に支給)。今の職場の残業は月10時間ほど。
A社の月給から固定残業代を引くと23万円ですが、そこには職務手当2万円が入っています。基本給は21万円で、B社の25万円より月4万円低くなります(計算の例)。
残業が20時間を下回る月は、A社は28万円のまま、B社は25万円に残業代が足されます。20時間を上回る月は、A社でも超えた分が追加で支給されます。今と同じ月10時間ほどの残業なら、A社は28万円、B社は25万円に10時間分の残業代を足した額です。
→ 月給ではA社が高く見えますが、基本給ではB社が上です。この人は、面接で両社の配属先の月の平均残業時間を聞き、両社の基本給・固定残業代・手当と残業の実績を並べます。そのうえで、残業が20時間を下回る場合と上回る場合の両方で、毎月の支給額を比べてから決めます。
次の一歩は、求人票の月給を3つに分けて書き出すこと
次の一歩は1つです。今見ている求人票を1枚開き、月給を基本給・固定残業代・その他の手当に分けて書き出してください。分けられない金額があれば、それを最初に質問しましょう。
内定が出て2社の条件を並べるときは、内定2社で迷ったときに条件を比べる方法を使ってください。書面と質問を使った比べ方をまとめています。
参考にした統計・資料
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」
- 同リーフレット、厚生労働省職業安定局調べ・平成27年度
数字は、出典の定義(誰の数字か・いつの数字か)のまま使っています。計算した数字には「計算の例」と書いています。編集方針