会社の将来性が不安なとき
辞めるか決める前に確かめる数字と順番
先に結論
厚生労働省の調査では、自己都合で辞めた転職者の25.2%が、辞めた理由に「会社の将来に不安を感じたから」を挙げています。辞めると決める前に、会社の決算の数字を何期か並べ、自分の賃金や仕事に起きた変化を書き出して、不安が数字で確かめられるかを見ましょう。
この記事の目次
同じ業界の会社が事業を縮める、というニュースを見た。社内でも、部署の統合の話や、今期は昇給を見送るという話が聞こえてくる。自分の会社は、このまま大丈夫なのだろうか。
不安は強いのに、何を見れば「大丈夫」と言えるのかが分からない。分からないまま辞めるのも、分からないまま残るのも怖いものです。
この記事では、辞めるかを決める前に、会社の将来について確かめる数字と、確かめる順番をまとめます。
不安の中身を、数字で確かめられるものと聞かないと分からないものに分ける
厚生労働省の調査で、自己都合で直前の勤め先を辞めた転職者が挙げた理由(3つまでの複数回答)の上位は、次の順でした。
- 1位 賃金が低い:25.5%
- 2位 会社の将来が不安:25.2%
- 3位 仕事内容に満足できない:24.7%
会社の将来への不安は、賃金とほぼ同じ割合の人が、辞める理由にしています。
ただ、「将来が不安」という一言には、中身の違うものが混ざっています。
- 数字で確かめられる不安:売上や利益が減っているか、従業員が減っているか、給料が決まった日に払われているか
- 聞かないと分からない不安:自分の部署の仕事が続くか、新しい仕事が来るか、昇給や賞与があるか
数字で確かめられる不安は、会社の外から確かめられるものがあります。聞かないと分からない不安は、社内で上司や人事に聞くしかありません。確かめられる不安と聞くしかない不安を混ぜたまま考えると、噂の強さで辞めるかを決めてしまいます。先に、外から確かめられる数字を見ましょう。
外から確かめる数字は、会社の種類で見る場所が違う
会社の決算は、会社の種類によって、公開される場所と中身が決まっています。
| 会社の種類 | 見る場所 | 見る数字 |
|---|---|---|
| 株式を上場している会社 | 金融庁の EDINET で、会社名を検索して有価証券報告書を開く。上場会社は、有価証券報告書を内閣総理大臣に提出する決まり(金融商品取引法第24条第1項) | 売上高と利益を数期分。「従業員の状況」の従業員数・平均勤続年数・平均年間給与 |
| 上場していない株式会社 | 会社が出す決算公告(官報や会社のサイトなど)。定時株主総会のあと、遅れずに貸借対照表を公告する決まり(会社法第440条第1項) | 貸借対照表の純資産の額と負債の合計。現預金や借入金は、分けて載っていればあわせて見る。売上や利益は、大会社でなければ公告の決まりがなく、載っていないことがあります。大会社は損益計算書も公告します |
| 公告が見つからない会社 | 自分の給与明細と、労働条件の通知 | 給料が決まった日に全額払われているか。基本給や手当が下がっていないか |
数字を見るときは、次のことを守ってください。
- 1期の増減で決めない。3期を並べて、増えているか減っているかの向きを見る
- 上場会社は、売上と従業員数を一緒に見る。売上が減って従業員も減っているなら、会社が規模を小さくしている途中の可能性があります。売上が減っても従業員数と平均年間給与が保たれているなら、会社が人件費を守っている形と読めます
同じ業界の別の会社の数字も並べると、会社だけの問題か、業界全体の動きかが分かります。決算は過去の結果なので、将来を保証するものではありません。それでも「不安」を「3期の売上が減っている」のように言い換えられると、次に何を聞くかが決まります。
会社の事情で辞めるなら、離職の理由で失業手当の扱いが変わる
数字が悪い向きに揃っていたら、辞める前に、もう一つ確かめることがあります。辞める理由が会社の事情なら、失業手当(雇用保険の基本手当)の扱いが変わることがあるからです。
自己都合で辞めると、受給の手続きから7日たったあと、原則1か月は手当が出ません※2。もらえる日数(所定給付日数)は、雇用保険に入っていた期間が10年未満なら90日です※3。
一方、会社の事情で辞めた人は「特定受給資格者」になることがあり、もらえる日数が増えることがあります。ハローワークが示す範囲には、次のものがあります※4。
- 事業所の廃止(再開の見込みがない事業の停止を含む)で辞めた
- 賃金が以前の85%未満に下がった(下がることになった)ために辞めた。本人が下がることを予見できなかった場合に限る
- 退職手当を除く賃金の3分の1を超える額が、支払日までに払われなかったために辞めた
- 事業主から退職を勧められた(いつでも応募できる早期退職優遇制度への応募は除く)
「会社の将来が不安だから」は、この一覧に入っていません。不安だけで辞めると、自己都合として扱われるのが基本です。一覧に当たるかどうかは、ハローワークが事情を聞いて判断します。
日数の差は、年齢と勤続で決まります。35歳以上45歳未満で、雇用保険に入っていた期間が5年以上10年未満なら、特定受給資格者は180日です※5。自己都合の90日と比べると、もらえる日数が90日多いうえに、最初の1か月の待ちも付きません。賃金の通知や、退職を勧められた日のメモのように、辞める前でなければ残せない記録があるので、辞める日を決める前にハローワークで相談し、どの月の賃金を比べるかなどの細かい判断基準も確かめてください。
給料が決まった日に払われていないときは、手当の前に、相談が先です。労働基準法では、賃金は毎月1回以上、決まった期日に、全額を払うことになっています※6。労働基準監督署の総合労働相談コーナー(無料)に相談しましょう。
数字に問題がないなら残って聞く手もある。残るか辞めるかを例で考える
3期の決算の数字(上場会社なら売上と利益、そうでなければ純資産など)が横ばいで、上場会社なら従業員数も保たれ、給料も決まった日に払われているなら(公告が見つからない会社なら、給料が決まった日に全額払われ、基本給や手当が下がっていなければ)、不安の中身は、聞かないと分からない側にあります。この場合、辞める前にできることがあります。上司や人事に、来期の方針と、自分の担当の仕事が会社の中でどういう位置づけかを聞くことです。答えがあいまいなら、見直す日を決めて残る手もあります。
以下は、想定の例です。
例:38歳・製造業の営業。勤続7年。上場会社なので有価証券報告書を3期分並べたところ、売上、利益、従業員数がそろって下がっていた。今月、部署の統合に合わせて、基本給と毎月決まった手当の合計が月30万円から25万円になると書面で通知された。
→ この人の賃金は、以前の約83%(25万円÷30万円)で、85%を下回っています。ただし、本人が下がることを前から予見できた場合などは、当たらないことがあります。この人は、通知の書面を保存し、通知の日の経緯をメモに残したうえで、辞める日を決める前にハローワークで、特定受給資格者に当たるかを相談します。勤続7年なので、当たれば90日ではなく180日が目安になります。
次の一歩は、直近3期の数字を1枚に写すこと
今週のうちに、会社の種類ごとの見る場所の表で自分の会社の種類を選び、その欄にある数字を3期分、1枚のメモに写してください(上場会社なら売上、利益、従業員数。上場していない会社なら純資産と負債。現預金・借入金は載っていれば)。公告が見つからない会社なら、この1年の給与明細を並べ、支払日と、基本給・手当の額を写してください。その横に、この1年で自分の賃金や仕事に起きた変化を書き出してください。給料が支払日に全額払われていないなら、まず労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談してください。給料が支払日に全額払われなかった、賃金が下がった、事業所が閉じることになった、退職を勧められたなど、ハローワークが示す範囲に当たりそうなことがあれば、辞める前に、ハローワークで離職の理由の扱いを相談してください。そうでなければ、上司や人事に聞くことを決めましょう。
数字を確かめたあとは、転職のタイミングを今にするか半年後にするかの決め方で、動く時期を決められます。
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