「上司が合わない」で辞める前に
しんどさの正体が分かる3つのポイント
先に結論
上司が合わないと感じたら、しんどさを「相性」「評価の見通し」「上司以外の不満」に分けましょう。上司が明日いなくなっても残る不満があるかが、判断の分かれ目です。
この記事の目次
日曜の夜になると、月曜の朝の定例を思い出して気が重くなる。報告のたびに言い方を考えすぎて、仕事そのものより、上司の顔色をうかがうことに疲れている。
仕事内容まで嫌いになったわけではない。それでも「この人の下にいる限りしんどい」と感じてしまう。そう思うのは、あなたが弱いからでも、甘えているからでもありません。
ただ、上司が合わないという理由だけで辞めると、次の職場でも同じことで迷うかもしれません。上司との相性は、入社する前には確かめにくいからです。
この記事では、しんどさの正体を3つに分けたうえで、辞める前に確かめておきたいことを順番にまとめます。
同じ理由で迷っている人は、少なくない
転職した人に「転職活動を始めた理由」を聞いた調査では、上位3つは次のとおりでした(出典:マイナビ「転職動向調査2026年版」2025年実績、複数回答)。
職場の人間関係は、給与とほぼ同じくらい多く挙がる理由です。転職した人のおよそ5人に1人が挙げています。ただし、この数字には、上司以外との人間関係も含まれています。
実際に会社を辞めた理由を見ても、人間関係は上位に入ります。転職した女性が前の会社を辞めた理由は、1位が労働時間や休日などの条件で12.9%、2位が職場の人間関係で11.5%でした(「その他」の理由を除く)。男性でも、職場の人間関係は8.9%で、給料などの収入が少ないこと(9.9%)とほぼ同じくらい挙がっていました(出典:厚生労働省「雇用動向調査」令和7年 表5)。
職場の人間関係に悩んで転職を考える人は、珍しくありません。上司が合わないというあなたの悩みも、多くの人が抱えているものです。
ただ、同じ「上司が合わない」でも、しんどさの中身は人によって違います。
しんどさの正体は、3つに分けられる
「合わない」の中身は、たいてい次の3つが混ざっています。
| しんどさの正体 | よくある感じ方 | 上司が変わったら消えるか |
|---|---|---|
| 相性 | 話し方がきつい、細かい、雑談が合わない | 消える |
| 評価の見通し | 何を頑張れば評価されるのか分からない | 消えることが多い |
| 上司以外の不満 | 給与、残業、会社の将来性、通勤 | 消えない |
見分けるには、「上司が明日いなくなったら、この不満は消えるか」と自分に聞いてみてください。
消えるなら、それは上司との問題です。消えないなら、上司とは別の理由として数えてください。
分けてみると、苦しさの中心は上司の性格ではなく、「頑張っても評価につながるか分からない」ことだったと気づく場合があります。
話し方がきつい上司でも、「この仕事が評価につながった」「次はここを直してほしい」と言ってもらえれば、やるべきことは見えます。反対に、評価の理由を聞けないままだと、何に力を入れればいいかが定まりません。昇給や昇進の見通しも立ちにくくなります。
確かめる前に、先に相談してほしいケース
上司の言動が指導の範囲を超えていると感じるなら、この先の確認は後回しにしてください。相性の問題として扱わず、先に社内外の相談窓口や専門家に相談しましょう。
当てはまらなければ、辞める前に次の3つを確かめてください。
- 上司に、評価の理由を聞けるか
- 異動などで、上司が変わる見込みはあるか
- 上司以外の不満のうち、社内で解決できないものがいくつあるか
確かめること1:評価の理由を聞けるか
次の評価面談で、上司に1つだけ質問してみてください。評価面談がない会社なら、1on1や業務の振り返りの場で構いません。
- 「次の評価で1段上がるには、何が足りないですか」
- 「今期、一番評価につながった仕事はどれですか」
コツは、責めているように聞こえないよう、「次にどうすればいいか」を聞く形にすることです。そうすれば、上司も具体的な仕事に沿って答えやすくなります。
上司の答えに応じて、次のように判断してください。
- 具体的に答えてくれた:上司と合わなくても、評価される道筋はあります。その道筋に沿って取り組み、次の評価に表れるかを確かめましょう。
- 答えてくれたが、曖昧だった:一度だけ、具体例を挙げてもらうよう頼みましょう。聞き直しても曖昧なら、評価の理由は「聞けない」として、次の確認に進んでください。
- 答えてくれない、はぐらかされた:上司の上の人や人事に、評価の基準を聞けるか確かめてください。基準が分かったら、その基準に照らして、自分の評価の理由を上司にもう一度聞きましょう。それでも答えがなければ、評価の理由は「聞けない」として、次の確認に進んでください。
「どうせ答えてくれない」と思っても、実際に聞いてみて、返ってきた答えをメモに残してください。印象ではなく、事実をもとに判断できるようになります。
確かめること2:上司が変わる見込みはあるか
給与や仕事内容に不満がなく、上司との関係だけがつらいなら、社内で解決できるかもしれません。あなたが異動する道もあれば、上司が異動する道もあります。
次の表で、上司が変わる見込みを確かめてください。
| 確かめる項目 | 確かめ方 | 見込みがあるサイン |
|---|---|---|
| 異動の希望を出す制度 | 就業規則、社内ポータル、人事への問い合わせ | 公募や自己申告の制度があり、実際に使った人がいる |
| 次に希望を出せる時期 | 人事面談や自己申告書の日程 | 半年以内に機会がある |
| 定期異動の時期 | 過去の人事発表の時期 | 半年以内に発表が予定されている |
| 上司の在任期間 | 部署の先輩や同僚に聞く | 社内の異動の周期に近づいている |
| 上司の上の人と話せる場 | 面談や相談の機会 | 上司の上の人に状況を伝えられる |
表のサインが2つ以上あるなら、社内で上司が変わる道を試しましょう。1つ以下なら、上司が変わる見込みは低いと考えてください。待つ期限は半年を目安にし、その間にある異動の希望の締め切りや、人事発表の時期に合わせて決めてください。
期限を決めるのは、「次の人事発表まで様子を見よう」をくり返さないためです。同じ迷いを1年、2年と引きずるのが、いちばん消耗します。
異動の希望を出すときは、上司と合わないことを理由の中心にしないほうが、希望が通りやすくなります。「やりたい仕事」や「伸ばしたい経験」を理由にして伝えましょう。伝え方の文例は、異動の希望の伝え方にまとめています。
確かめること3:上司以外の不満は、社内で解決できるか
最後に、辞めたい理由を紙に書き出してください。上司に関する理由を外したとき、何が残るでしょうか。
先ほどの「転職活動を始めた理由」の調査では、4位と5位は次の2つでした(出典:マイナビ「転職動向調査2026年版」2025年実績、複数回答)。
- 4位 会社の将来性への不安:18.3%
- 5位 昇進や昇給が見込めない:15.4%
上司への不満のほかに、こうした不満を抱えていないかも確かめてください。
残った不満は、1つずつ「社内で解決できるか」を確かめてください。見るのは、あなたの「嫌だ」という気持ちの強さではなく、今の会社がその不満を変えられる状態にあるかです。昇給の条件が決まっている、在宅勤務の制度があって実際に使っている人がいる、といった手がかりがあれば、社内で解決できる不満です。不満の種類ごとの確かめ方は、辞めたい理由を5つの軸で整理する方法にまとめています。
社内で解決できない、上司以外の不満が2つ以上あるなら、在職中に転職活動を始めましょう。上司が変わっても、今の会社にいる限り、その不満は残るからです。
社内で解決できない不満が1つ以下なら、まずは上司との関係に手を打ちましょう。辞める前に、評価の理由を聞き、異動できるかを確かめてください。社内で解決できる不満は、上司の件と並行して、社内で解消できないかを試しましょう。
ただし、不満の数は目安です。生活が苦しくなるほどの給与や、体調に響くほどの残業のように、1つだけでも受け入れられない不満があり、社内で良くなる見込みもないなら、その1つを理由に、在職中に転職活動を始めましょう。
どちらに数えるか迷う不満は、次のように分けてください。
- 「評価されないから給与が上がらない」→ 上司が変われば解決するかもしれないので、上司の不満に入れる
- 「会社の制度で、誰でも昇給しにくい」→ 上司が変わっても残るので、上司以外の不満に入れる
3つの答えから、次の一歩を決める
| 社内で解決できない、上司以外の不満 | 評価の理由 | 異動の見込み | 次の一歩 |
|---|---|---|---|
| 2つ以上 | ― | ― | 在職中に転職活動を始める |
| 1つ以下 | 聞ける | ― | 残って、上司から聞いた評価のポイントに取り組む |
| 1つ以下 | 聞けない | ある | 期限を決めて異動を待つ |
| 1つ以下 | 聞けない | ない | 在職中に転職活動を始める |
この表は、考えを整理するための目安です。社内で解決できない不満が1つだけでも、受け入れられないものなら、在職中に転職活動を始めてください。
決めきれないときは、給与・仕事内容・上司との関係のうち、今いちばん変えたいものを1つ選び、それが今の会社で変えられるかを先に確かめてください。
上司以外の不満もまとめて整理したいときは、辞めたい理由を5つの軸で整理する方法の仕分け表を使ってください。
3つの場面で考える(例)
同じ「上司が合わない」でも、答えは人によって分かれます。以下は、判断の違いを見せるための想定の例です。
例1:27歳・営業。上司の詰め方がきつく、会議のたびに萎縮してしまう。 評価面談で「次に上がるには何が足りないか」を聞くと、「新規の提案数」と具体的な答えが返ってきた。給与や仕事内容に大きな不満はない。 → 評価の道筋は見えましたが、会議で萎縮するつらさは残ります。この人は提案数を増やしながら、上司の上の人や人事に会議の進め方を相談し、次の異動の時期も確かめておきます。
例2:30歳・事務。上司が話を聞いてくれず、何を期待されているのか分からない。 評価の理由を聞いても「まあ、頑張って」で終わる。会社には異動の公募制度があり、半年後に希望を出せる。 → 評価の見通しが立たない状態です。この人は半年後の公募で異動を希望し、それでも状況が変わらなければ転職活動に移ります。
例3:29歳・企画。上司の指示が細かいうえに、残業が多く、会社の先行きも不安。 上司に関する理由を外しても、残業と会社の先行きの2つが残る。残業は部署全体の人手不足から来ていて、人事からは人を増やす予定はないと言われた。会社の先行きは、個人の相談では変えられない。 → 社内で解決できない不満が2つあります。上司が変わっても、この2つは消えません。この人は、今の会社で働きながら転職活動を始めます。
次の一歩は、1つだけでいい
全部を一度にやる必要はありません。次の一歩を1つだけ決めてください。
- 残ると決めた人:次の評価面談で評価の理由を1つ聞き、答えをメモに残す
- 期限を決めて待つ人:異動の希望を出す時期と、待つ期限をカレンダーに入れる
- 転職活動を始める人:会社を辞める前に、今週中に転職サイトに登録し、今と同じ職種の求人を3件見る
転職した人の74.3%、およそ4人に3人は、前の会社に在籍したまま転職しています(出典:マイナビ「転職動向調査2026年版」2025年実績)。先に辞めてしまうと、収入の心配から、次の職場を急いで決めてしまいがちです。
転職活動では、次の職場の上司との相性までは分かりません。確かめられるのは、評価の仕組みのほうです。エージェントとの面談や面接で次の3つを聞いておくと、同じ悩みをくり返しにくくなります。
- 配属先の上司は、何人の部下を見ているか
- 評価の面談は、年に何回あるか
- 評価の基準は、社員に示されているか
焦らなくて大丈夫です。まずは1つ、確かめるところから始めましょう。
この記事の図解
参考にした統計・資料
- マイナビ「転職動向調査2026年版」2025年実績
- 厚生労働省「雇用動向調査」令和7年 表5
数字は、出典の定義(誰の数字か・いつの数字か)のまま使っています。計算した数字には「計算の例」と書いています。編集方針
